水戸地裁 平成28年(ワ)第615号 放送受信料不当利得返還請求事件(ワンセグ)

ワンセグのみを所持していた原告(一般個人の方)が、被告(NHK)との放送受信契約は錯誤により無効として、支払った受信料を不当利得であるとして返金を請求していた事案です。

争点は、テレビは持っておらず、ワンセグ携帯だけを持っていた原告が放送法に定めるところの、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」として,被告(NHK)との間で放送受信契約を締結する義務を負っていたかどうかというものでした。

要するにワンセグ携帯を持っていることが、受信設備(いわゆる「テレビ」)を「設置」したことにあたるかどうかということです。

突き詰めて言うと、携帯は文字通り、携帯し持ち運ぶもの、「携帯」と「設置」は違うので「設置」していない以上、契約義務は無いのではないかということでした。

判決では「設置」と「携帯」の概念につき論考が重ねられ、結論として『本件規定にいう「設置」とは,被告の放送を受信することのできる受信設備を使用できる状態におくことをいい,一般的にいう「携帯」の概念をも包含すると解するのが相当である。』として携帯するワンセグ携帯の所持も「設置」に含められその結果、『本件規定にいう「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に該当し,被告との間で放送受信契約を締結する義務があった。』として、原告(一般個人の方)の請求を棄却します。

ワンセグ携帯であっても放送受信契約が有効であることを認めたのです。

 

ワンセグ携帯を巡る訴訟は他にも行われており、平成29年12月にもNHK側の主張(ワンセグ携帯は契約義務あり)を認める判決が出ています。他にはワンセグ携帯には契約義務は無いとする判決が出されたケースもあり判断が分かれている状態です。

「設置」を文字通り設備を「置いた」とみるのか、それとも受信できる状態に「置いた」=受信できる環境を整えた、と見るかで結論が変わってくるわけです。そもそも、放送法の規定が作られた時はテレビは高級品でしたが、今は非常に安く買える機種もありますし、携帯電話やスマートフォンに至っては「オマケ」の機能としてついてくるわけです。テレビを見るために携帯やスマートフォンを買う人はいませんよね。

携帯電話やスマートフォンは元々、テレビを見るための機器ではありませんし、ワンセグは画質も相当悪く、電波の状態によっては直ぐに映らなくなります。通常のテレビと同じ受信料を徴収するというのも不合理と感じられます。月額約1300円、年額で15000円以上となるのです。もう一台格安スマホが買えてしまいますよね。もちろんテレビも小さいものなら買えるでしょう。

放送法の規定自体が現時点の社会や技術の状況と合わなくなって来ているのです。その時代遅れの放送法に基づいて判断しても、国民の感覚からすると違和感を感じてしまうのは当たり前でしょう。

 

今後はNHKの集金人に「テレビを持っていません」と回答しても「ワンセグ携帯は持っていますよね!」と切り返されるケースが増えるかも知れません。NHKやその集金人には調査権、捜査権はありませんので、室内のテレビの有無や所持している携帯、スマートフォンを見せる必要・義務はありません。ワンセグ機能の無いスマートフォンもたくさんありますので買い替える時はそのような機種を選ぶのも一つの考えと思います。