東京高裁平成28年(ネ)第5233号(レオパレス)

 この裁判は、テレビ付きのレオパレスに入居された方(被控訴人)がNHK(控訴人)に対し、被控訴人は放送法64条1項の「受信設備を設置した者」に当たらないから、NHKとの契約は不当であり支払ってしまった受信料を返せと訴えたものです。

 被控訴人(レオパレスに入居した方)にしてみれば、自ら好んでテレビを設置したわけではないのに、契約及び受信料の負担を求められるのは不当であると主張しての訴えでした。結論は被控訴人の訴えは棄却され、NHKに支払った受信料を取り戻すことは出来ないとされました。

 

ご承知のとおりレオパレスは賃貸アパート、家具付きで貸し出していることが多いようです。この裁判でのレオパレスもテレビ付きで貸し出されておりました。レオパレスは『NHK受信料は家賃に含まれておらず、入居者の負担になる』とウェブサイトで案内していたようです。入居された方は社宅としての入居のようで、借主は法人(株式会社)であり、入居された方はこの法人の指定により平成27年10月19日から同年11月20日迄の1か月間だけレオパレスに滞在していたとのこと。

 

 ワンセグ訴訟と同じく「設置」の意義、意味が問われたわけですが、裁判所の判断として、『「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」は放送法固有の概念であるから,その意義を解釈するに当たっては,同項の文言だけなく,その立法趣旨も併せて考慮することが可能であり,かつ適切』として論考を重ね、『「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」とは,受信設備を物理的に設置した者だけでなく,その者から権利の譲渡を受けたり承諾を得たりして,受信設備を占有使用して放送を受信することができる状態にある者も含まれると解される。』と、テレビを実際に「設置」した大家やレオパレスだけでなく、その物件を譲り受けた者や占有の引き渡し(賃貸で入居など)を受けた者もNHKとの受信契約の当事者となり得ると結論付けています。

 被控訴人はその他、「課税要件明確主義に反する」との主張や、被控訴人自身はテレビの所有権は無いため「本件物件のテレビの処分権を有さず,このような者に対して受信契約締結義務を課すのであれば,放送法64条1項は憲法13条,19条及び29条に反して無効である」との主張も行いましたがいずれも排斥されました。

 裁判所としては、放送法の受信契約の当事者はテレビを実際に設置した者(この場合であれば大家やレオパレス)の他、占有している者(借主の会社やその会社の社員)もいずれもなりうるので、社宅として入居した被控訴人にも契約当事者としての適格性があり、契約は不当な行為ではなく、不当な行為で無い以上、支払った受信料を返却する義務はNHKに無いとの結論です。

 

 大家やレオパレス、借主である勤務先の会社の契約当事者としての適格性を排除しているわけではないので、これらの者が契約することも当然認容されるものと思います。被控訴人は契約してしまったがゆえに支払わなければならなかったのです。「勤務先に言ってくれ」「レオパレスに言ってくれ」「大家に言ってくれ」として自らの契約を拒否していればどうなったでしょう。

 NHKは社宅入居者に対して契約を求めることが出来るでしょうか?訴訟を行う場合は被告である社宅入居者が契約締結義務を負うことの立証を求められます。しかし大家、レオパレス、借主である勤務先の会社にも契約当事者としての適格性があると考えられる以上、他を排除して入居者の社員だけに契約義務を負わせるという判決が出るのでしょうか。実際に裁判をやってみなければわかりませんが、非常に難しい裁判・判断が求められるのではと感じています。他の者を排除して社宅入居者だけに契約締結義務を課すという判決は出ないのではないでしょうか。いずれにせよ、そして大家であろうが借主の会社であろうが契約してしまえば受信料の支払義務を負う。この点は変わりありません。

 

 レオパレスに入居する時はNHKとの受信契約に対してどのような考えで臨むのか、事前に検討が必要ですね。また、レオパレス等の賃貸アパート運営会社も、テレビの無い部屋を用意するなど、NHKに対してはいろいろな考えを持つ方がいるということに配慮することが求められるのではないでしょうか。