平成30年7月17日の最高裁判決(20年で契約は消滅するか)

平成30年7月17日、最高裁判所でNHK受信料についての新たな判決が出ました。兼ねてより20年以上未払いであれば、民法(第168条第1項前段)の規定により受信料支払義務そのものが消滅するのではという議論・考えがありましたが、この判決でそれは否定され、受信契約・受信料支払義務は消滅しないことが確認されました。

民法第168条第1項は次のとおり定めています。

『定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。』

この前段に基づき、20年以上未払いであればNHK受信料支払い義務が消滅すると視聴者側が主張したことに対し、NHKが争って訴訟となったわけです。定期金とは一定の時期に、支払いまたは受け取る金銭の事で受信料は月額で定められ2カ月毎に2カ月分を払うので定期金となるわけです。家賃も定期金ですし、個人年金なども何歳から何歳の間、月に(年に)いくらもらえるという内容の定期金となります。民法の規定の意味は、「月ごとや年ごとにお金を貰える権利がありながら、20年間放置していたら(行使しないときは)貰う権利は無くなりますよ。。」ということです。なお今までの裁判の積み上げで、賃料や地代については適用されないこととなっています。貸家や貸地なのに家賃・地代を払わなくて良い人が出てくるのは不合理でしょうという理由です。

 さて、今回のNHKの判決では、『受信契約に基づく受信料債権について民法168条1項前段の規定

の適用があるとすれば,受信契約を締結している者が将来生ずべき受信料の支払義務についてまでこれを免れ得ることとなり』との理由で、この主張を排斥しています。簡単に言うと、「20年以上支払いをしなかった人は受信料支払い義務そのものが消滅しちゃうとすると、テレビがあるのにずっと受信料を支払わなくて良い人というのが出来ちゃう。これは不公平でしょ。」ということ。法律論からいうと、また今までの地代等の判例から考えるとまあ十分予想できた結論です。

 この判決を受けて今後、長期未払いの方に対してのNHKの督促が厳しくなることが考えられます。特に20年以上未払いとなっていた方については、NHKも今までは裁判の様子見で厳しい督促は控えていた様ですが、今回の判決が出た以上、請求督促や訴訟が活発化するでしょう。集金人も稼ぎ時とばかりに「裁判でNHKの主張が通ったのだから受信料を払え!」と訪問してくることは間違いありません。

 

 でもご安心ください。今回の判決を受けてもなお、5年の時効は有効です。時効援用(時効の申し出)手続きを行えば、5年以上前の分の受信料支払い義務は無くなるのです。今回の裁判でも裁判手続きに入ったところで5年以内の分だけの支払いを命じるものとなっています。

ですので、焦ってNHKに受信料を支払う必要はありません。逆にNHKに電話したり、集金人と話してしまうと、債務承認行為(時効援用を封じる行為)と取られてしまう可能性があり時効援用が出来なくなる恐れがあります。

 またNHKの方から時効援用の説明をしたり手続きを取ってくれることはまずありません。逆に巧妙に払わせようとして来ますので注意が必要です。現にに当事務所にご相談いただいている方々の中には、「集金人に時効援用を申し出たが、こわもての集金人から『時効なんてものはない!』と強弁され泣く泣く書類にハンコをおしてしまった・・・」「NHKの電話で、『昔の分は払わなくていいから今後の分だけ払って』と言われてその後から払っていたのに、また最近になって払わなくて良いと言われた過去の分がまとめて請求された」などという相談が寄せられています。

 

 NHKから多額の請求書が届いた場合は、NHKに電話したりせずに、法律専門家にご相談ください。時効援用の手続きにより、5年以上前の受信料支払い義務を消滅させることが出来ます。また、NHKの集金人が来ても軽々しく話したりしないで下さい。知らない人が来た場合はドアを開けない、インターホン越しにNHK集金人が騒いだ時は(町内会に言いふらす、この街に住めなくしてやるなどと脅かす場合があります。)は「法律専門家に相談してますのでお帰り下さい。」と言って帰ってもらってください。もし玄関に入り込まれた時は、「帰って下さい。」とはっきり言い、それでも帰らなかった時は警察(110番)に電話して下さい。「帰って下さい。」と明言されたにも関わらず居座った場合は刑法130条に該当し不退去罪となりますので警察でも対応して頂けます。

 NHKの集金人は外部委託業者で、時効の話を持ち帰っても1円の得にもなりません。時効を受け付ける権限すら与えられていないのです。集金人と議論するのは100%無駄になりますので、とにかく接触しないことが大切です。

 

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平成30年7月17日判決 (20年で契約は消滅するか)
兼ねてより20年以上未払いであれば、民法(第168条第1項前段)の規定により受信料支払義務そのものが消滅するのではという議論・考えがありましたが、この判決でそれは否定され、受信契約・受信料支払義務は消滅しないことが確認されました。
平成29年(受)第2212号 放送受信料請求事件H30.7.17判決.pdf
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