受信料・契約に関する判例紹介

ここでは、NHKの受信契約と受信料に関する判例を紹介します。概要と私のコメントも併せて紹介しますのでご参考下さい。

旭川地裁 平成23年(レ)第45号,同第55号 放送受信料請求控訴,附帯控訴事件

NHKが受信料の滞納している契約者に対し支払督促を行い、契約者が異議を申し立て通常訴訟に移行して争われた案件です。

この裁判では受信料について「受信料の法的性質は,放送の視聴と対価性のあるものとはいえず,放送法に基づき,公共放送を行う法人である被控訴人に徴収権が認められた特殊な負担金と解するのが相当である。」としています。

横浜地裁平成25年(ワ)第82号 受信料等請求事件

NHK(原告)が主張した、NHK側からの「受信契約締結の申込みに対し受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じない場合でも,窓口変更通知到達日から相当期間が経過した時点で,原告と被告との間に受信契約が成立した」との主張は退けました。要するにNHKからの一方的通知で受信契約が成立するのだという主張は通らなかったということです。

札幌高裁平成24年(ツ)4  放送受信料請求上告事件

この判決文の趣旨は冒頭の

『上告人は,民法169条の支分権たる定期給付債権であると認められるためには,その前提として,支分権の発生根拠である民法168条の基本権たる定期金債権が存在しなければならないと主張する。しかしながら,賃料債権のように民法168条の適用がなくても民法169条の適用のある定期金債権もあるから,上告人の上記主張は理由がない。』・・・

札幌地裁平成20年(ワ)1499  放送受信料請求事件

妻が夫に無断でNHKと受信契約を締結してしまった(受信契約書に署名押印してしまった)例で、NHK側の受信料を払えとの主張に対する裁判です。

NHK側は妻による契約行為は、

①日常家事債務(民法761条)に含まれるので夫である被告は連帯責任を負うこと

②夫は妻へ代理権を授与していたこと

③表見代理(民法110条)が成立すること

④被告が妻の行為を追認したこと

の四つのいずれかに該当するから有効だとの主張です・・・・

平成29年12月6日のNHK受信契約に関する最高裁大法廷判決

平成29年12月6日のNHKに関する最高裁の判決

『平成26年(オ)第1130号,平成26年(受)第1440号,第1441号受信契約締結承諾等請求事件』

結果は現状維持でした。NHKの意図からすればNHK側の敗訴と言ってもいい内容であったとも考えられます。

この裁判は原告(NHK)が被告(一般の個人の方)に対し、「原告の放送を受信することのできる受信設備(以下,単に「受信設備」ということがある。)を設置していながら原告との間でその放送の受信についての契約(以下「受信契約」という。)を締結していない「被告」に対し,受信料の支払等を求める事案」でした。

水戸地裁 平成28年(ワ)第615号 放送受信料不当利得返還請求事件 (ワンセグ)

ワンセグのみを所持していた原告(一般個人の方)が、被告(NHK)との放送受信契約は錯誤により無効として、支払った受信料を不当利得であるとして返金を請求していた事案です。

争点は、テレビは持っておらず、ワンセグ携帯だけを持っていた原告が放送法に定めるところの、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」として,被告(NHK)との間で放送受信契約を締結する義務を負っていたかどうかというものでした。

東京高裁平成28年(ネ)第5233号(レオパレス)

 この裁判は、テレビ付きのレオパレスに入居された方(被控訴人)がNHK(控訴人)に対し、被控訴人は放送法64条1項の「受信設備を設置した者」に当たらないから、NHKとの契約は不当であり支払ってしまった受信料を返せと訴えたものです。

 被控訴人(レオパレスに入居した方)にしてみれば、自ら好んでテレビを設置したわけではないのに、契約及び受信料の負担を求められるのは不当であると主張しての訴えでした。結論は被控訴人の訴えは棄却され、NHKに支払った受信料を取り戻すことは出来ないとされました。

平成30年7月17日の最高裁判決(20年で契約は消滅するか)

 平成30年7月17日、最高裁判所でNHK受信料についての新たな判決が出ました。兼ねてより20年以上未払いであれば、民法(第168条第1項前段)の規定により受信料支払義務そのものが消滅するのではという議論・考えがありましたが、この判決でそれは否定され、受信契約・受信料支払義務は消滅しないことが確認されました。