横浜地裁平成25年(ワ)第82号 受信料等請求事件

NHK(原告)が主張した、NHK側からの「受信契約締結の申込みに対し受信契約の締結手続(受信契約書の提出)に応じない場合でも,窓口変更通知到達日から相当期間が経過した時点で,原告と被告との間に受信契約が成立した」との主張は退けました。要するにNHKからの一方的通知で受信契約が成立するのだという主張は通らなかったということです。

 

しかし、裁判所はNHK(原告)は、「原告からの受信契約締結の申込みに対し,契約締結を拒否するなどして契約をしない受信設備設置者に対しては,民法414条2項ただし書により,受信契約の締結に応諾する意思表示を命ずる判決を得ることによって,当該受信契約を締結させ,当該受信契約に基づいて,受信料の支払を求めることができるものというべきである。」

として、裁判に訴えNHKとの受信契約を命ずる判決を取れば、受信契約が成立するとしました。

 

ちなみに民法414条2項は次のとおりです。

『債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。』

これは裁判所の判決で意思表示の擬制が出来るというもの。

一方の主張だけで契約成立ではちょっと無理があるよ、裁判官が内容確認したうえで契約成立を命じましょうというもの。法律を学んだ者の感覚としては至極真っ当です。

 

そして判決ではさらに、「いずれにしても,被告は,原告に対し,受信設備設置の時点から前記受信契約に基づいて定められた受信料の支払義務を負っている」として被告の方がNHKに「テレビを設置しましたよ」という連絡をした日を含む月からの受信料支払い義務を認めたのです。

 

なお、裁判所は被告の「東日本大震災で受信機が壊れた」との主張を証拠がないとして退けています。裁判は証拠がモノを言う世界。厳しいですがこれが現実です。

 

この方(被告)は自らNHKに対しテレビを設置したという連絡(おそらくBSNHKの表示を消して欲しいとの連絡であったと考えられます。)をしているがゆえに、それがテレビ(受信機)があるという証拠となり、NHKは契約締結を求め、裁判所も契約を命じたわけです。逆に言うとテレビがあるという証拠が無ければ、NHKもこのような裁判(契約をしない方に対して契約締結を求める裁判)は出来ないと思います。証拠が無ければ負けますから。

 

そして、この場合、判決で契約締結と、テレビ設置日からの受信料の支払義務が認められたので、時効は判決確定日の翌日から10年間となります。10年は長いですね。